メイルVer.

 最近いつも空を見ている姿に気づく。

「ねぇロール?きっとまた何かあったのよね。でも、たぶん私には言ってくれないのよ」

 いつだって女の子は蚊帳の外。
 男女差別なんて時代遅れもいいところよ。

「いっつも、秘密ばかりなんだから」

 ネットセイバーになったということも、危険なところへ行くというときも、いつでも最後まで話さずに行ってしまう幼馴染。
 結局はこちらが気をつけて、気がつくしか方法はないのだ。

「今はやいとちゃんの情報網もないし・・・」

 良き相談相手は海の向こう。

「意外と頼りになるデカオ君も、留守だし」

 いつも傍にいた仲間たちがここに居ないことが心細く思えてしまう。

「はぁ・・・絶対、また何かあったのよ」

 また窓の外を見上げているのを目にとめて、深々と憂鬱なため息をついた。悔しいけれど、わたしはここで見ていることしか出来ない。
 きっと問いかけても、答えを求めてもただ彼を困らせてしまうだけだから。
 また自分自身で答えを導き出すしか、無いのだ。
 もどかしく感じながらも教室の片隅に座る彼から目を逸らした。
 すると別の場所から雑音に混じって聞き覚えのある名前が耳に飛び込んでくる。

「なあなあ、最近熱斗のやつ、ネットバトルしないよなぁ」

「ああ、そうだなー」

「デカオが居ないからだろ?」

「違うよ!誘おうと思っても、用事があるってこの頃放課後になるとすぐに・・・」

「だいたい強すぎてネットバトル申し込むやついないんじゃないか?」

 好き勝手な憶測は飛び交う。
 もちろん根も葉もない噂・・・ではない。
 実際に仲間たちで集まらなくなったから、ネットバトルをしなくなったのは本当だし、N1以来は本気のバトルをしようというクラスメイトも減ったと思う。
 指導を申し込む女子とかは一時期多かったけれど。

「・・・あ。思い出したらムカついた」

 アイドルじゃないんだから、TVに映ったくらいで騒ぐ必要も無いのに。
 そんな熱はあっという間に冷めて、今ではN1なんて話題にも出なくなって。
 残ったのは、熱斗の強さの証明と、周囲の大人たちからの評価。

「この間さぁ、電気街のゲーセンで新しい機械が入ってて」

「マジ!?じゃあ後でみんなで・・・」

 すでに興味は他に遷ったのか、話題は別のものに変わっていた。
 ますます憂鬱な気分になってわたしはもう一つため息をつく。
 ため息をつくと幸せが逃げる、なんて言った人が居たけれど、幸せな人がそれほどため息をつく理由も無いからあまり信憑性の無い言葉だ。
 視線を彼の席に戻すと、いつの間にかその姿はなくなっていた。
 どうやら既に下校してしまったらしい。

「きっとまた、何かあったのよね」

 ネットセイバーの仕事があってあちこちを走り回っていることは知っている。危険なことがあるならば自分たちも何かの助けに・・・と思うのだけれど。
 守られるだけではなくて、お互いに守ることが出来る、そんな関係でありたい。
 女の子だからといって守られっぱなしでは、納得できなかった。

「絶対突き止めてみせるんだから」

 事が終わってから知らされるなんてゴメンだから、体当たりで挑んでみせる。


 幼馴染に隠し事なんて、生意気よ。




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コメント▽
メイルちゃんは守られてるだけのヒロインじゃありません。
そんなわけでメイル視点です。異変に気づきつつ、事件とは離れた位置にいるため足踏み状態。やきもきしますよね、きっと。


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