ロックマンVer.

 学校へ続く道の途中。
 寝る前の短い時間、窓辺で立ち止まるとき。
 ふとしたときに空を見上げることが増えたと思う。

「熱斗くん、ぼんやりしてると遅刻しちゃうよ」

「うわぁ!やばいもうこんな時間かよ〜っ」

 誤魔化すようにすぐ目を逸らすけれど。
 ボクにはわかっているんだ。

「・・・お願い」

 搾り出すように呟かれた声は、データの屑となり誰の耳にも拾われることなく散っていく。
 お願い、どうか。
 繰り返す願掛けは何度も唱えれば力となるだろうか。
 ナビである自分が迷信を語るのもおかしなことかも知れなかったが、それでもことあるごとに祈らずには居られないのだ。

「熱斗くん、早く寝ないと明日起きられないよ」

「わかってるってば」

 ベッドの脇に座り込んで。
 見上げる瞳に映っているものを、ボクは知っている。

「熱斗くん・・・」

 鳶色の両の目に照り返すはずの光は、常人には不可視の存在のもので。幻想的な青白い光は間接的にも視覚することは出来ない。
 選ばれたからこそ映るその光は。

「熱斗くん」

 ぼんやりと空を見上げ続ける、彼の表情はいつもトロリとまどろむ様に頼りなくて、静かで。

「どうか」

 お願いです。
 どうか、彼を連れて行かないで。

「ねぇ、熱斗くん」

「・・・ごめん、もう少しだけな」

 監視しているようだ、と彼は言った。
 地球を監視しているようにゆったりと軌道を描く凶星は、その遥か上層から見ているのだ。
 紋章を持つ、彼のことを。

「お願いだから」

 空を見上げている彼を見ていると、いつか空に攫われてしまうのではとボクは不安になって。
 また彼の名前を呼んだ。




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コメント▽
そんなわけでロックマン。一番近くにいるので、一番敏感に変化を感じ取ります。


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