息を切らしながらガラス張りのドアをくぐる。
 メニューをどうぞ、とにこやかに迎え入れた店員の声も無視して、カウンターの前で即座に叫んでいた。

「ハッピーセット1つね、お姉さん!」

***

「もうー・・・熱斗くん、ボク恥ずかしかったよ・・・」

「だって早く見てみたかったからさぁ」

「おまけは逃げないでしょ」

「売り切れたら困る!」

「そんなこと無いよ初日なんだし」

 歩きながらがさごそと抱えた袋を鳴らし、交わす会話はテンポ良く弾んでいる。本人たちは普通に言い争っているのだろうけど、傍からみればその見事な息の合い様はまるでコントのようでもあった。

「あ、熱斗くんこんなとこで開けるの、お行儀悪いよ!」

「ロックマンはそういうとこ煩いよなぁ。いいじゃん、買い食いなんて誰でもしてるだろー」

 歩きながら紙袋を開き、中のものを取り出そうとしているのを見つけて慌てて注意したロックマンに、固いこと言うなよと返しながら熱斗はすでに目的のものを手にとっていた。

「これこれ!」

「うわぁー・・・」

 掲げるように持ち上げたその手の上にあるものは。

「ロックマン!!」

「ボク・・・だよねぇ」

 様々な事件を潜り抜け、大好きなネットバトルの大会でも好成績を残し。
 気がついたら結構有名になっていた彼ら。
 企業から話を持ちかけられたときはそれはもう驚いたものだったけれど、実際にこうして実物を見てみると現実感が沸いてきた。

「なんか・・・」

「は、恥ずかしい・・・」

 微妙に似ているのか似ていないのか。
 かしゃかしゃと稼動部分がついた原始的な玩具は、その動きを見ているだけで笑いを誘ってくる。

「ぷ・・・あはははははっ」

「熱斗くん!笑いすぎっっ!」

「ごめんってロックマン・・・だって、ははははっ」

「熱斗くん〜っ」

 どうやらツボにはまったのか、結構気に入ったらしいそれを持ち上げたり弄ったりして、熱斗はご満悦だ。
 からかわれた様な気がするロックマンは、自分と同じ姿の玩具を見て赤くなりながらも必死に反発している。その反応が面白くて熱斗はついもっとからかいたくなってしまうわけだけど。

「けど本当にロックマンだなぁー」

 かしゃんかしゃん。
 がちゃがちゃ。
 からからから。

「・・・・・・・・・」

「すげー。走るぜ、これ!」

「・・・・・・・・・・・・」

「うわ、面白れー!」

 すっかり夢中になってしまった熱斗をひそかに睨みあげながら。

「・・・どうせ見るなら、本物の方を見てよね」

「え、何か言った?ロックマン?」

 構ってもらえないことが、ちょっぴりだけ不満なロックマンであった。









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コメント▽
日記に書いた突発小話。ハッピーセットを買ってきて、その勢いで書きました(笑) ものすごく面白かったです、このハッピーセットのおまけ。


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