※デカ熱ですので、苦手な方はご注意ください。

 暫くぶりに帰国した友人は、いろんな意味で見違えるような変貌を遂げていた。

「やっぱうめーよなぁ」

 うずたかく積み上げられたカレー皿と、その逆側にはまだ残るおかわりのルーとご飯。
 だいぶお腹も膨れてきたためか、普通に会話する余裕が出てきた熱斗はしみじみとその味を噛み締めて呟いた。

「ありがとうよ、熱斗」

 向かい側にはおたまを片手に、給仕をしながら嬉しそうに食べる様子を見ているシェフの姿。
 大山デカオ。
 何を間違ったのかWWWへ弟子入りした挙句にカレーつくりの技術の全てを体得し、日本へ帰ってきた彼である。
 何の連絡もなしにふらりと帰ってきたのにも驚かされたけれど、それよりもっと吃驚したのが今回の事件での彼らの活躍だった。

「っかし、驚いたぜ〜。普通にカレー屋をオープンしたんだと思ってたら、ネオWWWと戦うために帰ってきたっていうし」

 事件の現場に駆けつけたときには、既にガッツマンたちがデザートマンと戦ってくれていて。
 被害の拡大を最小限にとどめることが出来たのは彼らのおかげともいえた。

「へへっ、黙ってて悪かったな。あいつらの目をごまかすために芝居を打ったんだけど、思ったよりチサオにも心配かけちまって・・・」

「ほんとだぜー、チサオかなりショック受けてたみたいだもんな。あとでちゃんと構ってやれよ?」

「言われるまでも無いぜ」

 くすくす、と笑いながら最後のひとすくいをスプーンに乗せ、嬉しそうにほおばる。
 デカオの作ったカレーは確かに絶品の味だったけれど、その代わりにネットバトルを捨てたというのには驚かされた。だから、それが敵を騙すための芝居・・・嘘だったとわかり、安心したのは熱斗も同様であった。

「お前も安心したか?」

「えっ。な、何が?」

 こちらの考えを読んだような質問をされて、ご飯が咽喉に詰まるかという思いをする。
 熱斗がじたばたともがいてると、すぐに目の前に水が入ったコップが差し出された。それを飲んでようやく落ち着きを取り戻す。

「大丈夫かよ、熱斗?」

「あ、ああ・・・」

 引きつった笑顔を返しながら、熱斗はなんとか返答する。
 まったく、彼の言動はどこまでが演技でどこまでが天然なのかわからない。

「ま、お前達はやっぱり俺様がついてないとな!」

「はは、調子良いこと言ってらぁ」

 軽口を叩きながら、内心では嬉しくて苦笑した。
 どんなに偉そうな態度をとられても嫌な気持ちはしない。同じ年の仲間たちの間で年長者ぶるその姿は、きっと彼が唯一「兄」という部類の存在だからなのだろう。
 もしも自分に兄弟がいたならば、彼みたいに大きくてあったかいものなのだろうか。

「お、なんだよ熱斗、まだ砂がついてるじゃねーか」

「え?」

 テーブルの向こうから身を乗り出して、大きな指が頬に伸ばされる。
 じゃりっとした感触と柔らかい温かさが通り過ぎて、見上げると今度はそこに白いハンカチがあてがわれた。

「あっ、こっちは少し切れてるぞ」

「いててっ」

 全く、無茶するよなぁー。
 そんな呟きが聞こえていたけれど、視界は殆どが白い布でさえぎられていたから熱斗はどこがどうなっているのかさっぱり判らない。
 これは、何となくチサオと同じようにあしらわれているのではないだろうか。そう気がついたときには、ふわりと触れていた手は遠くに離されていた。

「飯もだけど、ネットバトルの前に救急箱だなっ」

「あ、デカオっ・・・」

 何か声をかけようとしたのだけれど。
 それよりも素早く、相手は厨房の奥へと姿を消してしまった後だった。
 面倒見が良くて優しく強く・・・料理の腕も抜群。

「・・・マジかよ〜」

 これはメイルではなくても。

「くそー、今回ばかりは」

 ノックアウト、だ。









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コメント▽
連続でデカ熱・・・(大汗) 書いてる本人だけが主に楽しかったです。
秋原小メンバーの兄貴分、て感じで。デカオはものすごく世話焼きっぽく思えるのですよ。チサオも懐いてるし、ブラコンだし。あそこまでチサオが懐くってことは、やっぱり良いお兄ちゃんなんですよねv
大山兄弟を見て熱斗くんちょっぴり寂しくなったりするんでしょうか。「兄さんかぁ・・・」「熱斗くんもあんなふうにして欲しいの?」「なっ///そんなわけないだろ、5年生にもなって・・・!」(明らかに動揺)。
というわけで、肩車でたかいたかいなチサオを思わずじーっと見てしまったり。けれど後から、ふざけあいでデカオに肩の上担ぎ上げられてみたり。←ドリーム
イメージだけが色々と湧いてきます。兄なデカオに憧れてしまう弟性質な熱斗。この図式でよろしくお願いします〜vv


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