1.

 それは突然の出会いから始まる。

 ※注意。恋の始まりではありません。

「・・・こ、これは・・・っ」

「・・・さ?」

 電脳空間の端っこに、隠れるようにゆらゆら揺れる。

「何で?・・・だって・・・」

 ゆれるお耳は、誰のもの?

「うさ」

 ふわふわと揺れる真っ白な耳は、さらりと流れる癖毛の中にいっそう際立って映った。見上げてくる目は泣き腫らしたように赤。
 けれど決して泣いたせいでその色になったわけではない。

「うさ・・・」

 気をつけなければ見落としてしまいそうな、電脳空間の隅に、ちいさく蹲っていたその存在は。

「熱斗・・・くん??」

 確かに昼間の戦いで全てデリートされたはずの。

「えええ?」

 コピー熱斗(うさ耳バージョン)。
 ・・・しかもなぜか、てのひらサイズ。

「うさー・・・」

 ほてほて、ぽてり。
 ヨロヨロとたどたどしい足取りで歩み寄り、何も無いところで躓いて転んだ。その姿を見る限りでも害はまったくなさそうである。
 しかし。

「どうしよう・・・コレ」

 思わず両手を差し伸べてすくいあげてしまったロックマンは、その姿を改めて確認してため息をついた。
 センサーには確かに点等している、ウイルス反応。

「デリートなんて出来ないよ」

 ただでさえ熱斗の姿。
 それがこうして小さく、弱弱しく、無害に。
 はっきり言ってしまえば、すごくすごく可愛らしく。
 目の前に現れられてはデリートなんて出来ようはずはない。

「新手の攻撃とか?」

 ビデオマン、精神攻撃に転じたか。
 しかしそのビデオマンの姿も気配も感じられなかった。そもそも昼間の今で再び現れるとも考え難い。

「うさ?」

「うわぁぁ、そんな目で見ないでってば」

 つぶらな瞳できょとんと見上げてくる「それ」に翻弄されながら、当面どうするべきかと更なる難題を突きつけられながら、ロックマンは途方にくれて電脳の空を仰いだ。

 それは確かに突然の出会いから始まったのだ。





つづく。
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(再録コメント)
妙なところで続いてて失礼します;
アニメ24話ネタなのですが、うさみみ熱斗くんが頭から離れず、こんなことになってしまいました(笑)
ものすごく短い小話ですけど、何度かに分けて拍手連載の予定。
いまのところ1話のみです。
入れ替えで次は2話にします。(何度も押さないと続きが出ないんじゃ読みにくいので;)
拍手お礼なのにお礼になってない、馬鹿話で失礼しました〜;;
(追加コメント)
まさかこんなに長い連載になるとは思いませんでした;
軽い気持ちでウサ耳ネタをやれればいいなぁーと思って始めたんですけど、気がつけば全6話です。やりすぎでしたと反省(笑)


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